2024.04.02
私の元彼の話をしよう。
彼は、私より一回り以上年上の人だった。
元職場の同僚で、初対面の時から興味があった。
なんと言うか、面白い人だな、と。
元々年上が好きだったし、経験がなかったから、経験豊富な人に憧れていたのもあった。
色々話す内に、2人だけで会う時間が増えた。
嬉しかった。今まで誰とも付き合った事のない私に、異性が興味を抱いてくれた。
気が付けば、少しずつ体を許すようになった。
始めは、付き合う前にそういう事をするのに抵抗はあった。
昔の言い方で言えば、貞操観念と言うのか。踏み込んだ事を許すのは、将来結婚してもらえる人だけだと思っていた。
世間の奴等がどう思うかなんて、どうでもいいが。
みんな簡単に許しているようだから。
ともかく。私は彼に触れられるのが嫌ではなかった。不思議な事に。最初から。
好意を嫌だと思う事もなく。戸惑いはしたが。
彼はそんな私を理解してくれていたのか、強引に事を進める事もなく、ゆっくりゆっくり時間を掛けて、私に関わってくれた。
私は今住んでいる所へは、愛着もない。引っ越してきた。
だから、寂しさが拭えなかった。それは今でも変わらない。
そんな中で、彼には沢山支えてもらい、励ましてもらった。
私が両親と揉めて、泣きながら助けを求めた時も。彼は夜、車で駆け付けてくれた。
嬉しかった。本当に、私の救いだった。
何かあればすぐに話してしまうぐらい、彼を頼り、すがっていた。
…けれど、いつしかそれは甘えに変わり、相手への負担に変わっていったのだと思う。
私を好きでいてくれた好意に甘え、自分の思い通りにならない反応をする度、当たり散らすようになった。
彼を随分傷付けたと思う。謝っても、戻せるものでもなく。
…でも、同時に、私の中でも彼との関わりが辛くなっていた。
辛かったけれど、報われない悲しさも感じていた。
彼を責めたい訳じゃない。だが、やりきれない思いもある。
私は私の気持ちに嘘を付く事は出来ない。
何度も何度も泣き腫らした。その度に、自分に問い掛けた。
「私は、どうしたい?」と。
何度も泣いたのに、気が付けば私から声を掛けていた。
「やっぱり失いたくない」と。
そうして、日々の苦しみから逃げていた。抱いてもらう事で、死にたい気持ちを和らげた。
…だが、ある日。私が彼から拒否された時。積もり積もった悲しみと怒りに歯止めが利かなかった。
「死んじゃえばいい」と怒鳴り付け、泣きながら物を投げる。
あの人は、何を思ったのか。
後日、私が色々謝っても、受け入れられる事はなかった。
「一生悔やめばいい」「返事なんて、なくて当たり前」…冷たい返答だけが、私が返事を促した後、ようやく返ってきた。
正直、今でも怒りはある。何故、私だけが悪いのか?
私だけが責められるのは、お門違いじゃないか?
果ては「抱ける女がいるから抱くというなら、抱けるかもしれない」とまで言われた。
私の尊厳が軽んじられて、踏みにじられている感覚だった。
調子に乗るな、ふざけるな、と思った。
…それなのに。最後は感謝と謝罪の言葉が浮かんだ。
自分でも分からない。だが、紛れもない私の言葉だ。
今でも返事を待ってしまっている自分がいる。返事なんて、なくて当たり前の筈なのに。
私の求める「救い」は、やっぱりあの人にあってしまうのか。
今はよく分からない。考えたくない。